子犬は生まれてからしばらくの間は、母犬からもらった移行抗体によって、さまざまなウイルスから守られています(移行抗体は、母犬のお腹にいる時に受け継ぐほか、生まれてすぐに飲む母乳にもたくさん含まれています)。しかし、生後40日〜150日くらいの間で、徐々にそれらは消えてしまうため、ワクチンを打つことで、新たに免疫を作る必要があるのです。
ただし、母犬からもらった移行抗体がまだ残っている間は、ワクチンを打っても効果が打ち消されてしまう場合があります。そのため、間隔をあけて複数回ワクチンを打つことで、より確実に免疫を作ることができるのです。またワクチンを追加接種することにより、下がってきた抗体価を再び上昇させ、感染に対する免疫力を高めることができます。これをブースター効果と言います。
ワクチンを打つタイミングや回数は、個々の犬によっても違いますが、大体2〜4回くらい接種する例が多いようです。
また、生後91日齢以上の犬は狂犬病のワクチンを接種するよう義務付けられています。詳しくはかかりつけの動物病院で相談してください!
一般に、最終のワクチンが済んで2週間くらいしないと、子犬の免疫力は十分とは言えません。外出すると感染症にかかるリスクがあるため、獣医師やペットショップから、「ワクチンが終わるまで外には出さないで」とアドバイスされた方は多いのではないでしょうか?
とはいえ、実はこの時期は子犬の心の成長にとって非常に大切な「社会化期(Story05参照)」でもあります。この時期に家の中だけですごしてしまうと、外の環境やほかの動物、家族以外の人に慣れることができず、怖がりな性格になってしまう可能性が高いのです。その結果、成犬になってから「ちょっとした音にも恐がって吠える」「家族以外の人や動物と仲良くできない」といったトラブルが起きてしまうこともあります。
最近では「子犬をよく観察し、家にも慣れて元気や食欲が安定していたら、抱っこをして少しずつ外の環境にも慣らしましょう」とか「1回目のワクチンが済んだら、子犬が他の犬の排泄物に触れないよう気をつけながら、少しずつ外出に慣らしましょう」といったアドバイスをする先生も増えています。
また、動物病院やしつけ教室などで、子犬の健康状態をきちんと把握した上で、社会化の機会を作る「パピークラス」を開催するところもあります。そうした場所を利用するのもお薦めです。