犬や猫も人間も、ある日を境に突然、老けるわけではありません。毎日、少しずつ変化しているのです。早く気づけば、それだけ早く対処することができます。
老化のサインの表れ方はその子によって異なりますが、よく見られるのは下記のようなものです。ただし、単なる老化ではなく、病気が原因で下記のようなサインが見られる場合もあります。変化に気づいたら、まずはかかりつけの獣医師に相談してみましょう。
●外見の変化
<目>
・白く濁って見える
*老化に伴う目のトラブルが増え、瞳孔の奥が白く濁る白内障などの症状が出ることも。
<口>
・歯が抜ける
・歯が茶色っぽく変色している
・歯茎が赤く腫れている
・口臭がきつくなる
*高齢の犬の多くで歯周病が見られます。歯に歯垢・歯石が付いて茶色っぽくなったり、歯茎に炎症が起きて赤く腫れたりします。ひどくなると歯が抜けてしまうことも。歯が擦り減ったり、折れるなどのトラブルもあります。
<皮膚・被毛>
・白髪が出てくる
・抜け毛が増える
・毛づや・毛並みが悪くなる
・皮膚がカサついてフケが出る
・顔や体にできものができる
*毛根の細胞が老化したり、新陳代謝が悪くなって抜け毛の量が増えます。皮脂の分泌が減るため、毛づやも悪くなり、毛がパサつくことも。皮膚が乾燥してフケが出たり、皮膚の老化が原因で顔や体にできもの(イボ)ができる子も(ただし、腫瘍などの場合もあるので注意が必要)。
<体型>
・食べる量は変わらないのに太ってくる
・食べる量は変わらないのにやせてくる
・お尻が小さくなったように見える
*基礎代謝が低下するため、食事内容が同じなのに太ってしまう子もいれば、逆に消化・吸収の能力が衰えるためやせてくる子もいます。また、筋肉量が低下してお尻が小さく見えることも。
●行動の変化
<動作>
・歩く、立つ、座るなどの動きがゆっくりになる
・後ろ足の歩幅が狭くなるなど、歩き方が変わってくる
・段差につまづいたり、ものにぶつかる
*関節に痛みがあって動きに時間がかかったり、小さな段差につまずいたりすることが。筋力の低下が原因のこともあります。つまづいたり、ものにぶつかる場合は視力が低下している可能性も。
<生活態度>
・好奇心や活発さがなくなり、散歩や遊びを喜ばない
・呼びかけなどへの反応がにぶくなる
・散歩中に座り込んだり、息切れしたりする
・体に触られるのを嫌がる
*体の不調や体力の低下などが原因で、活発に動くより寝ているのを好むようになったりします。体のどこかに痛みがあって、動いたり、触られるのを嫌がる場合も。反応がにぶるのは、聴力が低下しているのかもしれません。散歩中だけでなく安静にしている時も息切れする場合は、循環器に問題がある場合も。
<トイレ>
・粗相をするようになる
・トイレに行く回数が増える
*オシッコのたまった感覚がわかりにくくなったり、排尿をコントロールしにくくなることが。ただし、泌尿器系の病気が原因の場合もあるので注意して。
<食事>
・食べるのに時間がかかる
・硬いものを食べたがらない
*シニアの子に限らず、歯周病で口の中に痛みがあったりすると見られる行動。首や背骨に痛みがあったりして、床の上に置かれた食器から食べにくくなっている場合もあります。
★健康診断で体の内側の変化を把握しよう!
上記のように飼い主さんが気づける老化のサインは、実は氷山の一角でしかありません。外からはわからない体の中でさまざまな変化が起きていることが多いのです。
定期的な健康診断を受けて、体の中の状況を正しく把握することが大事。最低でも半年に一度、何か気になる点が出てきたら3カ月に一度、といったように徐々にチェックの回数を増やしていくといいでしょう。
子犬の頃はたくさん遊んだり、しつけをしたりして一緒に過ごす時間が長かったのに、大人になるにつれてあまり構わなくなってしまうケースがあります。でも、愛犬の変化に早く気づくには毎日、愛犬の体にたくさん触れて、見つめ合うことが大切。人間は自分自身の体調の変化にもなかなか気づかないものですから、意識して触れ合わないと、愛犬の変化に気づいてあげるのは難しいのです。
飼い主さんが毎日、愛犬との時間をつくって愛情を持って観察してあげることが、老化対策の第一歩です。
●7歳、10歳、13歳は犬の「厄年」!?
老化のサインを見逃さないためのヒントとして、「犬にも厄年がある!」と考えてみるのがオススメです。老化の進行は個体差が大きく一概には言えないのですが、人間の厄年と同じように「これくらいの年齢になったら気をつけよう」と心に留めておくといいでしょう。
具体的には、多くの犬では7歳頃(大型犬では5歳頃)になると、老化のきざしがみられるようになります。いつもと同じフードを食べていても太ってきたり、白髪ができたり、内臓機能の衰えも少しずつ始まります。10歳頃になると、がんや関節炎、歯周病といった病気の子が増えてきます。また、関節や歯が悪くなるなど何らかの老化の症状が見られるように。13歳頃になると、認知症の症状が表れたり、足腰も弱ってくるので、生活全般でより注意が必要となります。
もちろん、13歳になってもピンピンしている子はたくさんいます。何事もなく厄年を過ぎたら「ラッキー」と思えばいいのです。
●何でも「年のせい」にしない!
愛犬がある程度の年齢になると、せっかく老化のサインに気づいても「もう年だから」と思ってしまいがち。しかし、適切な治療や環境の改善によって良くなったり、進行を遅らせられるケースも多いのです。例えば「名前を呼んでも反応しない」という場合、物事への関心が低下している場合もありますが、実は聴力が低下していたり、関節などの痛みのため動きづらいといった場合もあります。先入観を持たず、何が原因なのかを考えてあげましょう。